ビールは注ぎ方で味が変わる! 50年前の注ぎ方のビールが美味しすぎる
ビールというものがある。飲みに行った場合の1杯目はとりあえずビールという人も多いのではないだろうか。透き通る黄金の液体に、白い泡。喉越しがなんと言ってもたまらない。仕事終わりの一杯は格別だ。
そんなビールだけれど、ビールサーバーからの注ぎ方で味が変わると聞いた。しかも、入れ方は何種類もあり、それぞれで違うと言う。それは飲んでみたいということで、「ビールスタンド重富」に行くことにした。
ビールは美味しい
仕事の後や、夏の日のビールは格別の美味しさがあると思う。缶から飲んでも美味しいけれど、グラスやジョッキに注いで飲むビールはさらなる美味しさがある。あと明るいうちに飲むビールも美味しい。
私はお酒が好きだ。ただとんでもなく弱いので、あまり飲まないけれど、というか飲めないけれど、味は好きで、ビールも大好きだ。量を飲めないので、その1杯、最初の1杯に全てをかけていると言ってもいい。
銘柄よる味の違いはあるけれど、銘柄が同じならば、どのお店で飲んでも同じ味と思っていた。しかし、ビールサーバーからの注ぎ方でビールの味は変わるらしい。ということで、私は広島にあるビールスタンド重富に飛んだ。
広島で最初のお店
ビールスタンド重富は広島市中区銀山町にあるお店だ。現在の店主は重富寛さん。80年以上続く酒屋で、広島で樽から最初にビールを注いだのは、現在の店主の祖父かキリンビヤホールのどちらかという歴史あるお店だ。
酒屋としてはずっと経営していたけれど、9年前に「ビールの本当の美味しさを届けたい」という想いでビールスタンド重富がオープンさせた。私はいつだってビールは美味しいと思っていたけれど、それは本当の美味しさではないのだ、たぶん。
氷でビールを冷やす「氷式冷蔵庫」を採用したりなど、いろいろな工夫をしているこちらのお店。一番の特徴はビールサーバー「スイングカラン」なのではないだろうか。重富さんの祖父が使っていたのがまさにこれだった。
図面などをもとにこの「スイングカラン」を再現した。ちなみにスイングカランは日本オリジナルのビール注ぎ出し装置。今のものとは違い、ビールの出る速度が速いのが特徴だ。今のものでは出せない、50年前の喉越しを体験できる。そこにビールの本当の美味しさがあるのだ。
ビールはどこで飲んでも同じ味、と思っていたけれど、昔は違った。注ぎ手というものがいて、このカランを使い、お店ごとに異なる特徴を持つビールを出していたのだ。そのため「あの店のビールは美味しい」があった。現代ではあまりない価値観だ。
重富さんは「まな板洗ったり、包丁を研いだりするように、グラスを綺麗に洗うなどで味が変わる」と言う。ビールを注ぐ前からビールの味は決まるのだ。氷でビールを冷やすのもその一つ。もちろん注ぎ方でも変わる。
ビールの注ぎ方に種類があるのだ。そこに驚く。ビールサーバーからただ注ぐだけ、と思うけれど、違うのだ。注ぎ方で味が変わるのだ。素人でも味の違いはわかるのだろうか。だって、元のビールは同じなのだ。
これは飲むのが楽しみになる。では、そもそもなんでビールの注ぎ方を選べるのだろうか。今までビールの注ぎ方を選択したことが私にはない。
その通りだ。もし注ぎ方で味が変わるならば、選べた方がより自分の好みとなるビールになるはず。早速飲ませてもらおう。
グラスを濡らすのだ。その一手間(と言っても大した手間ではないけど)で味が変わるならぜひ、今後はバンバン濡らしていきたい。
1度つぎ
まずは「1度つぎ」を飲ませてもらう。ビールが出てくるスピード感が現代のサーバーの4倍から5倍という、今のサーバーでは絶対に再現できないビールの注ぎ方だ。
驚くスピードでグラスにビールが注がれた。1分間で10杯は注ぐことができるそだ。今のサーバーで10杯注ごうと思うと2、3分かかるので、その速さは驚きしかない。
こんなに美味しいビールを飲んだのは初めてだった。親に借金してビールを買っていた時代もあるので、ビールは飲んで来たと思うけれど、こんなに美味しいビールはなかった。爽快感と言えばいいのだろうか。なんの抵抗もなく喉を過ぎていく。矛盾している感じに聞こえるかもしれないが、喉越し自体は荒々しい。なんなんだ、これは!
やはりそうなのだ。荒々しいのに、いい意味でこれビールなの? くらいの勢いで飲んでしまう。思わず、これアルコール度数低いんですか? と聞いてしまった。
最初の一杯でこのビールが出てきたら最高だ。永遠に飲める感じ。荒々しくも爽快感のある喉越しと、炭酸がないことで感じられる麦の甘味。今までのビールはなんだったの? と思う。いや、ビール自体は日本中で流通しているビール、注ぎ方で変わるのだ、すごい。
2度つぎ
昔はいたと言う注ぎ手の存在の大切さを感じた。注ぎ手には技術があったので、いま自分が飲みたいビールに出会うことができたのだ。それは銘柄ではない、注ぎ方だ。
これは先の「1度つぎ」に比べると、深みがある感じがする。旨味と言ってもいいかもしれない。喉越しなどもまろやかになった。角が取れた感じだ。
やはりそうなのだ。素人の私でも味の違いがわかる。明確にわかるのだ。あと私は味という言葉を使っているけれど、そこには喉越しや炭酸感など、いろいろなものが含まれている。純粋に甘味が増した、という話ではない。でも、違うと言うことだ。そして、美味しいということだ。
3度つぎ
ビールのイラストを描く時、ジョッキの上部から泡が溢れている感じに描くと思う。しかしよく考えると、そんなビールを見たことがない。でも、大丈夫。この「3度つぎ」で見ることができます。
泡の苦みが口の中を支配する。ただそれは嫌な苦味ではない。旨味の苦み。意味がわからない気がすると思うけれど、私の語彙力では無理なのだ。いや、誰でも無理ではないか。飲まなければわからない。旨味の苦みが口の中を支配し、下のビールの甘味というか、優しさが深みを生み出す。美味しいということだ。
なるほど。泡の役目を十分すぎるほど全うしている。すべて味が違う。ビールは材料であり完成形ではないのだ。ビールを注ぐことが料理。今までは材料のまま食べていたのだ。
マイルドつぎ
3度つぎは1杯を注ぐのに3分ほどかかった。マイルドつぎも3分ほどかかる。待ち時間があるからだ。昔はお店ごとに注ぎ方があった。いい時代だったと思う。ビールが美味しい時代、素晴らしいではないか。
ビールに重みを感じる。同じビール、同じ量なのに重く感じるのだ。その重みは嫌なものではなく、重厚と言えばいいのだろうか。炭酸と苦みを極限まで弱め、ビール本来の甘みを楽しめる。
ビールは注ぎ方!
本当はもう一つ「シャープつぎ」というものがあるのだけれど、今回はここまで。続編があるわけではなく、私が酔ったのだ。お酒が弱い私が4杯もビールを飲むことがすごい。でも、飲まずにはいられない味だった。ビールへの認識が変わった。
重富さんが、絹ごし豆腐と木綿豆腐の味の違いを明確に言えますか? と言っていた。確かに食感などが違うのはわかるけれど、味の違いはと言われると困る。ビールもそういうことなのだ。食感などを変えることで、別の味わいになる。
ビールの最高の肴はストレス、と重富さんは言っていた。確かに、大変な後にここのビールを飲めば最高に美味しいと思う。というか、美味しかった。もう言ってしまおう。日本一美味しいビールは広島にある、と。まじで美味しいから一度飲んだ方がいいよ!
ビールスタンド重富
住所:広島市中区銀山町10-12
電話:050-3635-4147
営業時間:17時~19時