瀬戸内海で釣りをしたかった! 最高の魚料理を食べる
瀬戸内海というものがある。日本最大の内海で、大小様々な700ほどの島が浮かぶ。東西は約450キロも続き、本州、九州、四国を接している。一年間を通して雨は少なく、古くからノリや牡蠣の生産も盛んに行われた。
瀬戸内海には様々な魚類が暮らしている。外海から入ってくる魚を含めると430種類にもなる。広島県はもちろんそんな瀬戸内海に面している。釣りをするには最高の場所だ。ということで、瀬戸内海で釣りをして、釣った魚を料理しようと思う。
瀬戸内海について
日本で暮らす人で瀬戸内海を知らない人はいないだろう。瀬戸内海では古くから、本当に古くから人々が暮らしてきた。後期旧石器時代のナイフ型の石器も見つかっている。現在のような瀬戸内海の形になったのは、6000年ほど前と思われる。
瀬戸内海の特徴として、潮の干満差が大きいことも挙げられる。潮の流れが速いということだ。これのおかげで海水の上下を混ぜ、海底にある栄養塩を光の当たるところまで運ぶなど、瀬戸内海の豊かな生態系を作り出している。難しい話はおいといて、瀬戸内海は豊か、ということだ。
瀬戸内海は1府10県に接している。江戸時代に大阪が「天下の台所」と呼ばれたのには、瀬戸内海の影響がもちろんある。また潮流にもまれて、魚の身が引き締まるなど、美味しい魚を生み出すのも、瀬戸内海の素晴らしい点だ。
釣りをしよう!
簡単ではあるが、瀬戸内海が魚類に恵まれているのがわかったと思う。ということは、釣りにも適した場所なのだ。私は釣りを趣味としているので、東京に住んでいるけれど、広島で釣りをしたいと前々から思っていた。
近年は旅行のついでに釣り、というのが流行っている。大手釣具メーカーからも「トラベルロッド」や「パックロッド」と言われる、仕舞寸が50センチほどになるロッド(釣竿)が続々と発売されている。
ヨーロッパではパックロッドが多くラインナップされてきた。たとえば、シマノはヨーロッパだけで販売するパックロッドがあったりする。日本ではそれほどパックロッドの需要がなかったけれど、最近は、ダイワからセブンハーフが、シマノからフリーゲームXTが発売されるなど、熱いカテゴリーになっている。
今回は「ブラックスター 2ndジェネレーション モバイルS74」を持って広島にやってきた。継数は5本、仕舞寸は53cm、0.4g~15gのルアーを投げることができる。釣りのカテゴリーで言えばライトゲームということになるが、ややファーストテーパーの汎用性の高い1本だ。
このロッドは使い勝手がよく、何が釣れるかわからない場所に行く時はとりあえずこれを持っていく。荷物にならないサイズだし、トルクフルなバットパワーを持つので、万が一のランカーサイズの魚にも困らない。お気に入りの一本だ。
どの魚を釣るかで使うルアーが異なる。厳密なことを言えば、必ずしもそうではないのだけれど、現在の釣り業界では魚ごとにルアーが異なることになっている。ただメタルマルは魚種限定解除を売りにしており、メバルも、ハマチも、ヒラメもフィッシュイーターならなんでも釣ることができる。
釣りは危険でもあるので、ライフジャケットももちろん持ってきた。これがない状態で釣りをするのは危険なのだ。腰巻きなので、ラフジャケットの中では嵩張らない。これを腰につけて、大物を釣り上げる私の未来が浮かぶ。
私が持ってきた釣り関係のものは、「ロッド」「ルアー」「ライフジャケット」の3つとなる。そう、ダメなのだ。たりないのだ。釣りには、リールが必要なのだ。リールとは、糸が巻いてあって、釣竿に装着して使う、なくてはならないものだ。
リールを忘れました。意外と釣り人あるあるだと思うのだけれど、リールを家に忘れちゃったのだ。つまり、ロッドはある、ルアーもある、ライフジャケットもある、が釣りはできないのだ。だって、リールが家にあるんだもん。リールがないと釣りはできないのだ。
とりあえず瀬戸内海を見に行く
釣れませんでした、という記事のオチは私も予想していた。いくら瀬戸内海が魚の宝庫だとしても、必ずしも釣れるとは限らない。しかし、「釣りにいけませんでした」は想定していなかった。天気はべらぼうにいいんだぜ。でも、リールがないんだぜ。
リールを買えばいいではないか、とは思った。しかし、私が使っているリールですら、2、3万円するのだ。それはもったいない。だって、家に帰ればリールあるんだぜ。ということで、瀬戸内海を見に来たわけだ。釣具は持たずに。だって持ってきてもリールがないから釣りはできないからね。
瀬戸内海は美しかった。そもそも水尻駅からの景色が映画の一場面のようだった。釣り人もいて、私が投げる予定だったルアーを投げていた。もちろん私は投げない。なぜならリールがないからね。投げたくても投げられないのだ。
こんな綺麗な海で育つ魚はさぞ美味しいと思う。そして、さぞ釣りをしたら面白いだろうなと思う。でも、釣りはしない。だってリールがないからね。せめて食べたいということで、美味しい魚を食べられるお店に足を運んだ。
魚が美味しいぞい!
広島市の胡町にある「廣島さけのさかな」。15年ほど前にオープンした、瀬戸内海で取れる魚はもちろん、その日、その日で仕入れたいいものを出すお店だ。ランチもやっているそうだけれど、私は夜に訪ねた。だって、昼間は海を見ていたからね。リールがないから、ただただ海を見ていたからね。
本来は私自らが釣って捌き食べる予定だった魚が、盛り合わされている。いや、自分でもし釣りができてもここまで多くの種類を釣ることはできなかったので、もはやこちらに食べに来て正解だったのではないだろうか。輝いて見える。絶対に美味しいやつだ。
広島サーモンは、万古渓の清流で稚魚を育て、大崎上島周辺の瀬戸内で大きく育てたブランド魚。採卵から出荷まで一貫して広島県内で行われ、さっぱりとした脂身と弾力のある歯ごたえ、強い旨味が特徴だ。これは自分では絶対に釣れない魚。釣りより、食べに来て正解だったと強く感じる。
通年を通して食べられるものと、季節限定のピンチョスもあった。刺身のネタになるものに串を打ち焼く。鮮度がいいものが炙られるわけだ。これ絶対に美味しいやつ。タコの味噌マヨネーズなんて自分では作れないやつだ。タコ釣る道具なんて持っていないし。リールすら持ってないわけだし。
もはや魚じゃいのよ。釣りに行っておでんが、しかも味噌煮込みおでんが釣れますか? って話なのだ。広島のおでんが味噌味ということではなく、こちらのお店オリジナルのブレンド味噌を使った一品。牛すじ、牛ホルモン、大根、こんにゃくなど、燦然と輝いて見える。
瀬戸の島「大崎上島」の農家直送のレモンを使った生搾りサワーだ。釣りでレモンが釣れますか、って話なのだ。瀬戸内海の島では柑橘系の生産が盛んだ。温暖少雨の気候が美味しいレモンを作るのだ。それを自ら搾りサワーにする。美味しいに決まっている。
もちろん広島の地酒も注文した。もし私がリールを忘れずに釣りに行った場合、おそらく何かは釣れていたけれど、こんなに豪華な食卓にはならなかった。台所付きのホテルを借りてはいたけれど、小さな、とても小さなお魚を焼いて終わりだったと思う。リールを忘れてよかった。
ここからは私の美味いという表情の写真が続く。それはなぜか、美味しいからだ。美味しいのだ。お刺身は臭みというものがなく、盛り合わせなので、いろいろな味を楽しめる。広島サーモン、美味しかった。以前から食べたいと思っていたのだ。私はブランドサーモンが好きで、見つけては食べている。広島サーモンはかなりいい。
牡蠣にベーコンというのがいい。パンチを与えている。牡蠣は濃い味だけれど、陸の恵とも言うべきベーコンが強いパンチ力を生み出している。他のピンチョスも最高。刺身にするべきものを炙っているので、まずいわけがないのだ。口の中で旨味が弾ける。
美味しいが流れ作業のようになっている。美味しいを生産する工場だ。だって、ずっと美味しいんだもん。リール忘れてよかったと心から思う。レモンの酸味が爽やか。キレがあるのだ。渋みのようなものはなく、人工的なものも感じない。最高のレモンサワーなのではないだろうか。
味噌の甘味。オリジナルの味噌が最高のおでんを作り出している。魚がいい意味であっさりなので、そこにやってくる味噌がたまらない。本当に美味しい。リールを忘れてよかったとこんなにも思ったことはない。いいお店や。お店の方もめちゃくちゃ優しかったし。
釣りができなくても
釣りをする人は、キャッチアンドリリースという人も多いと思うけれど、私は釣ったら食べたい派。食材を確保するために釣りに行っている。しかし、わかった。お店ですわ。本当に満足だった。あれもこれも食べられるし、全部美味しかった。若干強がりが入っている。本当は釣りをして、さらにこのお店に行けばよかった。なんでリールを忘れるかな、俺。
廣島さけのさかな
住所:広島県広島市中区胡町3-24
電話 050-5595-8654
参考文献
「瀬戸内海事典」北川建次 関太郎 高橋衞 印南敏秀 佐竹昭 町博光 三浦正幸 南々社 2007