バーではどうすればカッコいいんですか? カシスオレンジを超えるカクテルに出会う
バーというものがある。英語で書けば「Bar」だ。洋酒が並び、バーテンダーがシェイカーを振り、カクテルを作る。レイモンドチャンドラーの書いた小説に「ギムレットにはまだ早い」という名言がある。ギムレットもカクテルだ。
そんなバーに行ってみたいのだけれど、敷居の高さを感じる。カタカナばかりのメニューだし、お酒の知識がないとダメな気もする。でも、素人感も出したくない。そこで、バーでは何を頼めばいいのかなどを聞いた。
カシスオレンジ最強論
お酒にはいろいろなものがある。ビールに、ウィスキーに、ジンに、ラムに、と挙げればキリがない。そんなお酒などを2種類以上混ぜたものをカクテルという。ウィスキーと炭酸水で作る「ハイボール」もカクテルとなる。
私が一番好きなお酒は「カシスオレンジ」である。この世で一番美味しいお酒だと思っている。カシスリキュールとオレンジジュースで作ったカクテルだ。甘くて好きなのだ。私はお酒に甘みも求める傾向がある。
居酒屋などに行くとカシスオレンジを絶対に頼むわけだけど、誰も私をカッコいいと思ってくれない。私が「カシスオレンジなら全然酔わない、いくらでも飲める」と酒豪アピールをすると、「だろうね」と若干バカにされる感じで誰も彼もが返してくるのだ。
そんな酒豪の私だからこそ、バーに行きたい。ただ敷居を高く感じる。お酒のことなんて何にも知らないのだ。カシスオレンジくらいしかカクテルを飲んだことがない気がする。ただバーはカッコいいイメージがあるから行きたいのだ。
バーの作法を知る
広島市中区新天地にある「バーウスケボ」を訪ねた。入った瞬間にイメージするバーだ、という感じがする。お酒がカウンターの向こうに並び、バーテンダーの紳士が蝶ネクタイをつけている。
バーウスケボは1989年に胡通りにオープンし、今の場所に移ったのは17年前。バーテンダーの山下さんはずっとこのお店でバーテンダーをしている。歴史あるお店で、経験が十分すぎるバーテンダーがいるお店ということだ。
正直に言えば緊張した。カッコいい、こういうところに通えたらと思う。
「あ、そうなの」という驚きだった。お酒に詳しい人が通っているイメージだった。知らなくても来ていいのかという安堵。だって私はカシスオレンジ一本でここまでやってきたから。
では、どのように注文すればいいのだろか。メニューはあっても、聞いたことのないカタカナが並んでいて、よくわからないのだ。
今の自分に一番合うお酒を飲むことができるということだ。つまりお酒を知らなくても、好みを伝えさえすればいいのだ。
最高ではないか。やっぱりお酒に詳しくない人こそバーなのではないだろうか。バーテンダーさんが考えてくれるから。
私はお酒に強くない。カシスオレンジなら樽で行けるけれど、一般的にはお酒に強くないと思う。そんな人がバーに来てもいいのだろうか。
ノンアルコールカクテルもあるのだ。どんな味なのだろうか。
聞けば聞くほど、お酒に詳しくなく、自称酒豪で本当はお酒に強くない、ただバーという雰囲気に強く憧れのある私は、バーに行くべき人間のように思える。私はバーに選ばれし人間なのだ。おめでとう、私。おめでとう、バー。そして、全ての子供達(カクテル)に、おめでとう。
カッコよさの出し方
バーでの注文は学んだ。問題はカッコよさである。バーでカッコいいと思われる存在になりたいのだ。私はレイモンドチャンドラーのフィリップ・マーロウシリーズを愛読している。だからこそ、カッコいいに憧れるのだ。
では、バーではどうすればカッコいいのだろうか。
それはカッコいい。めちゃくちゃカッコいい。自分のスタイルの確立だ。憧れるやつだ。
バーテンダーさんにより同じカクテルでも味が異なるそうだ。だから、このお店ではこれ、と決めるわけだ。カッコいい。すぐにはできないけれど、一番カッコいいのは、このようなスタイルではないだろうか。
よく考えると私はずっと同じお酒を飲んでいる。そうカシスオレンジだ。では、これを10年通い続けて毎回頼めばカッコいいになるのだろうか。
カシスオレンジも奥が深いのだ。今後、もし私と飲む機会があって、カシスオレンジを飲んでいたら「博士だな」と思って欲しい。と言っても、居酒屋でしか飲んだことがないけど。
居酒屋とバーではお酒が異なるわけだ。ということは、バーでカシスオレンジを飲んだ場合は、私の「カシスオレンジならいくらでも飲める」はないかもしれない。
しつこく聞いてみた。カッコいいとはいかなくても、バーテンダーさんに緊張の走る注文はあるのか、と。
これだ。バーに慣れている感じが出るではないか。素人感を消すことができる。ただ山下さんは「飲み方でわかりますけどね」とも言っていた。場数は必要だ。
お話を聞いていたらジントニックを飲みたくなった。ジンとトニックウォーターとライムで作るカクテルだ。山下さんに「この後、お仕事は?」と聞かれた。今の私に一番合うジントニックを作ってくれるのだ。
飲んでみると驚くほど美味しかった。甘さ、喉越し、お酒の濃さなどが私の求めているものだった。ジントニックなんてシンプルなお酒なのに、今までに飲んだジントニックと比べてあきらかに美味しいのだ。
具体的な数字があるけれど、測って入れているわけではない。注ぐ時の液体の線の太さと時間で量を見極めている。カッコいい。とてもカッコいい。さらにトニックをどこに注ぐかでも味が変わるという。
私がこのジントニックを飲んで喉越しに感動したわけだけど、作っている様子を思い出すと、液面にトニックウォーターを注いでいた。全ては考えられて作られているのだ。
ちなみにいま私が飲んだジントニックは「ロングカクテル」というジャンルになる。もう一つ「ショートカクテル」というものがある。ギムレットなどがそれに当たる。
つまり1時間バーにいれば、3杯か4杯飲むというがスマートということだ。いろいろ学べた。そして、バーの奥深さをしれた。バー、楽しいぞ。
BarUsquebaugh(ウスケボ)
住所:広島県広島市中区新天地6−1ビルグランポルト6階
電話:082-248-4818
カシスオレンジを超えてくれ
バーの楽しみ方というのがわかったので、もう一軒バーに行くことにした。広島市中区堀川町にある「BAR麦」。先のバーほどは広くはないけれど、ここもまたイメージあるバーの雰囲気だ。
石田さんは8年ほどバーテンダーをしている。バー素人の頼み方を聞いたら、やはり先のウスケボと同じで、好みなどを伝えてくれればいいとのこと。やはり私はメニューを見てもよくわからないのだ。
好みを伝えればいいけれど、たとえば、私が女性とバーに行った場合、「この人、お酒を知らないんだ」とだけは思われたくない。実際は知らないのだけれど、ちょっと詳しい感を出したい。その場合、何を頼めばいいのだろうか。
もう断定して欲しいとお願いした。お酒を知らないので、もうこれ! と何も考えずに頼めるものを。
本日、決定いたしました。女性と訪れてカッコいいと思わせるためには、「ホワイト・レディ」ということになりました。薄く白いショートカクテルだ。
ホワイト・レディに決まったけれど、私としては「カシスオレンジ」を超えるカクテルに出会いたい。私の愛した「カシスオレンジ」。これを超えるカクテルはあるのだろうか。声高らかに「カシスオレンジを超えるカクテルを」とお願いした。
その後に炭酸は入ってもいいですか? などの質問があり、私は「カシスオレンジ」を超える美味しさならなんでもいいです、とお願いした。
飲んでみるとこれが凄まじく美味しい。マジでカシスオレンジを超えた。軽く超えた。甘みが上品で紳士っぽい感じなのだ。後を引かないさっぱりとした感じで、一口ごとに「美味しい」と言いたくなる。
短い会話で私の求める適度な甘さを判断したのだ。バーテンダーさんとは職人だ。今後は「サンジェルマントニック」だけを飲みたいと思った。本当に美味しいのだ。
ポイントはここ。バーテンダーさんで味が変わるのだ。それがバーの面白いところ。だからこそ、いろんなバーに行く楽しみが増える。また飲みたい、石田さんの「サンジェルマントニック」。感動的な味だった。なによりバーテンダーさんとお話しできて、お酒という人生について教えてもらえるのもバーの楽しみ方の一つだ。
BAR麦
住所:広島県広島市中区堀川町1-4小川ビル1F
電話:082-246-9300
バーが極めた!
バーに憧れがあったけれど、お酒の知識がなかったり、カシスオレンジ最強説を唱えていたりで行けないでいた。それが今回でバーのことがわかった。基本的には好みを伝えて「おまかせ」すればいいのだ。女性と一緒でカッコつけたい時は1杯目だけ「ホワイト・レディ」を頼めばいい。2杯目からはおまかせか、サンジェルマントニック。私のバーへの道がひらけた。問題は行く女性がいないことだ。